Coleopterological Society of Japan

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例会(東京名古屋大阪調査観察)の案内・記録は各ページに移しました

日本甲虫学会の年次大会記録


プログラム・研究発表要旨集PDFは各大会部分、またはこちらをごらんください。



日本甲虫学会第13回大会報告


2023年12月2日(土)と3日(日)に,愛媛大学農学部(松山市)で開催された.本大会は,日本昆虫分類学会第26回大会と合同である.
2日に評議員会,総会,学会賞受賞講演,分科会(6会場)が開かれた.本年度の学会賞は以下の通り.
受賞論文Waki, Y., Y. Yamamoto & K. Matsumura. Habitat characteristics of coast environments and leg morphology in the flightless supralittoral weevil Isonycholips gotoi (Coleoptera, Curculionidae). Elytra, New Series 13 (1)
功労賞該当者なし
奨励賞千田喜博会員

3日に同定会,口頭発表(20題),ポスター発表(2題),シンポジウムが開かれた.

詳細は 講演要旨集にある.

以下に大会開催について思ったことを書きたい.
予定では2020年度に11回大会として愛媛大学で開催予定であったがコロナ禍で中止となり(さやばねニューシリーズ(38): 67),愛媛大学が主宰で大会ではなくオンライン発表会として開催した.2021年度は北海道大学主宰で11回大会,2022年度は明星大学主宰で12回大会をそれぞれオンラインで開催した.よって4年ぶりのオンサイトでの大会開催であった.

学会の大会を引き受けることはかなり負担となり,学会員の所属する大学や博物館をたらいまわしになっている状態である.これは本学会だけの問題ではなく,他の学会でも同様である.また,地方で大会が開かれる場合,学会の参加費だけでなく移動する交通費もばかにならない.ましてや四国は僻地である.そこで本大会を開くにあたり,運営の省力化(手抜き)と安くすませることの2つを心がけた.結果として,事前の手配等はほぼ1人で行えたが,前日の準備や当日の運営は人手が必要であり,学生や周囲のバックアップが大会運営に重要であることを再認識した.運営経費に関しては,学会からの大会援助金と参加費ですべて賄うことができた.松山市では申請すればコンベンション開催助成が得られるのだが(参加者100名以上で10万円),申請の手間や参加者数が不透明であったので,今回申請は行わなかった.結果的に100名を超える参加者があったので,もし申請し助成金を得ていれば参加費の徴収も必要なかった.

9月発行のさやばねニューシリーズ51号にて会員に周知,10月31日に参加申込の締め切りを行ったが,すべてオンライン(Formsを用いる)での申し込みとした.若干名がFormsに入力できずメールでの申込があり2名はFormsもメールも対応できず電話での申込であった.最終的に109名の参加申込があり当日参加を含め126名の参加者であった.そのうち約30名が学生であった.学生の参加者が多かったのは良かったことであるが,30代40代の中間世代がいないという声もあった.

講演要旨は印刷せず,PDFファイルを参加者に配布する形式をとり(数名にメールで届かないという連絡があった),ほとんどの参加者はスマホ等にダウンロードしてきたか自身で印刷したものを持参していた.念のために印刷したものを10部用意していたが,数部を使用しただけであった.講演要旨は学会HPで公開している.


口頭発表の様子

日本昆虫分類学会のTwitter (新X)で,発表タイトルやお土産,採集地の情報などを流したところ,どれも1000件を超えるインプレッションがあり注目されていることが判ったが,参加者の中にはTwitter (新X)のアカウントを持っていないために見ることができなかったという声もあった.


カンキツ試食コーナー(1日目終了時の様子)

反省点としては,講演要旨のタイムスケジュールに時間の誤記があり混乱を招いた点(発表件数に合わせて調整したのでミスをした)と,開催場所が不便な農学部であった点(街中の城北キャンパスで行う予定であったが入試等の予定がはいってしまった)が挙げられる.また,懇親会をやって欲しかったという声もあったが,逆に懇親会が無くてその分安くて良かったとか少人数で気の合った人たちで集まれたので良かったという声もあった.



文献類無料配布コーナー(1日目終了時)

同定会の様子

2024年度の14回大会は東京都立大学で開かれる予定である.今回の大会の経験を活かし少しでも楽な大会準備・運営ができることをお祈りしたい.

最後に,大会運営に協力頂いた皆様,参加者の皆様,シンポジストの3先生に厚くお礼申し上げる.

(大会運営委員 吉富博之)



2022年度第12回大会(オンライン大会)

日本甲虫学会第12回大会は,12月10日(土)~11日(日)の2日間開催された.当初,東京都日野市の明星大学日野キャンパスで実施される予定であったが,11月中からの新型コロナウィルスの蔓延(第8波)が始まり,オンライン大会への切り替えに踏み切らざるを得なくなった.昨年オンラインで実施された第11回大会の経験を踏まえて,Zoomウェビナーを用いた一会場で実施した.1日目の午後,明星大学のZoomアカウントを用いて公開シンポジウムが開催された.また,オンライン大会のため,対面で実施するような懇親会は催すことができなかったが,代わりにoViceによる自由歓談の時間を設けた(1日目20:00~23:00).


大会会期2日間の日程は以下の様であった.
1日目:12月10日(土)
評議員会・各種委員会10:30-11:50
開会挨拶12:00-12:10
一般講演(第一部)12:10-12:40
公開シンポジウム13:00-15:00
日本甲虫学会総会・授賞式15:30-16:40
受賞講演16:45-17:05
一般講演(第二部)17:30-18:45
oViceによる自由歓談20:00-23:00
2日目:12月11日(日)
一般講演(第一部)9:00-11:45
一般講演(第二部)13:15-15:30
分科会16:00-18:00

公開シンポジウムについては,前述のように1日目午後13:00~15:00に,以下のテーマで実施された.
「昆虫研究の魅力を通して科学する楽しみを知ろう~甲虫学から始める教育アウトリーチ活動~」.
明星大学の和田薫会員をコンビナーとして,丸山宗利会員(九州大学),福富宏和会員(石川県ふれあい昆虫館),松村洋子会員(北海道大学),柿添翔太郎会員(国立科学博物館)が,それぞれの研究,活動内容を紹介するとともに,甲虫学を志す若者たちへのアドバイスを行った.明星大学からの呼びかけにより,多数の小中高生など若い世代の視聴者が集まった.事後の調査によれば,10:50~15:10の261分の範囲で,延べ362名の参加があった.事前申し込みをしたのは131名であって,その内訳は以下のようであった:小学生(13%),中学生(13%),高校生(5%),中学教員(2%),高校教員(4%),その他(49.6%)(学会員の参加は以上には含まれず13%程度).和田氏がチェックしたところ,「その他」には,昆虫以外の研究者や教育分野の方も参加され,幼稚園児から80歳を超える幅広い自然愛好者が視聴したとのことであった.地域的には,北海道から九州,海外からの参加もあった.


公開シンポジウムに続いて,今度は大会のZoomアカウントに戻り,日本甲虫学会の今年度総会と,学会賞の授賞式が行われた.さらにそれに引き続いて論文賞を受賞した金子直樹氏による受賞講演が行われた.今年度の学会賞各賞の受賞者は以下の通りであった.
論文賞:Naoki Kaneko & Koichi Tanaka(2022)
The relationship between body size and hind wing folding patterns in Rutelinae and Cetoniinae(Coleoptera, Scarabaeidae). Elytra, new series, Tokyo, 12(1): 47-59.
功労賞:新里達也会員
奨励賞:張 勝男会員

一般講演については,1日目7題,2日目17題の合計24題が行われた.2日目16:00~,一般講演の終了後,ゴミムシとハネカクシの2件の分科会がそれぞれの団体のZoomアカウントを使って行われた.

今回大会の参加者数については以下のとおりである.1日目:延べ178名(同時最大視聴数:111名)2日目:延べ185名(同時最大視聴数:133名)

今回大会の運営スタッフは以下のとおりである.大会長:野村周平,大会実行委員長;和田 薫,事務局長:柿添翔太郎,実行委員:吉田貴大,金子直樹,樽宗一朗,阿部純大,佐藤勇哉,鈴木信也,外村俊輔,橋爪拓斗,菊地那樹,荒木 葵,菊地波輝.

(文責:野村周平)


2021年度第11回大会(北海道大学主宰:オンライン大会)

講演要旨PDFはこちら

 日本甲虫学会第11回大会は,昆虫分類学若手懇談会と日本昆虫分類学会との共催で,12月4日(土)から12月5日(日)の計2日間の日程で行われた.目下,新型コロナウイルスの感染状況を踏まえて対面での大会を断念し,日本甲虫学会として初めてとなるZoomウェビナーを用いた完全オンライン開催の形式にて実施することとなった.

 なお,大会事務局は北海道大学札幌キャンパス(札幌市)に置かれ,第2回(2011年度)大会以来,実に十年振りに北海道大学が運営を担うこととなり,当日は弊学総合博物館に事務局員が集まり,本大会のために特別に作成したTシャツを着用して運営にあたった.言うまでもなくオンライン大会という都合上,現地開催での懇親会はもちろんのこと,急遽開催が決まった関係でシンポジウムの開催すらも叶わなかった.

 とはいえ,大会参加者は170名(内,学生51名)であり,加えて大阪市立自然史博物館で2021年度年末大阪例会として実施された本大会のパブリックビューイングの参加者12名や団体参加などを含めると,実際の参加者はさらに多かったものと思われる.特筆すべきは,本大会では海外からの参加申し込みを無料で受け付けたことで,オーストラリア・インド・台湾などから7名の申し込みがあった.肝心の講演発表だが,昨年度分を合わせた論文賞の受賞講演2件に加え,一般講演35件と分科会の7件を合わせた44演題が行われ,大変盛況な大会となったと言えよう.その内,38件は主に甲虫に関する内容であった.いずれもすべてが口頭発表であり,本大会ではポスター形式での発表は受け付けなかった.

 大会初日は開会の挨拶の後,一般講演26件の発表が行われた.その合間を縫って,お昼休みには評議委員会が開催された.全講演が終了した後にはoViceというオンラインシステムを用いた懇親会を実施し,会員諸氏の交流を図った.懇親会開始の挨拶として,まず大原昌宏学会長と共催の日本昆虫分類学会を代表して吉富博之会員のご両名からお言葉を頂き,中締めとして明星大学(東京都日野市)で開催を予定されている次回大会の野村周平大会長よりスピーチを頂戴した.

 大会2日目は英語での発表を中心に9件の口頭発表が行われ,合間に同定会が開催された.初めての試みとなるオンラインの同定会であり,各自で同定対象となる標本の画像を呈示する形式で,活発な意見交換が行われた.お昼には総会と授与式が連動する形で開催され,中止となった昨年度大会の表彰も加え,以下の方々が表彰された.論文賞の受賞記念講演は辻尚道会員と竹本拓矢会員により両年度分が行われた.

2020年度論文賞:Tsuji, N. & H. Yoshitake: A taxonomic study of the Gasterocercini genus Orochlesis Pascoe(Coleoptera, Curculionidae, Cryptorhynchinae) in Japan. Elytra, new series, Tokyo, 10(1) : 65-103.
2021年度論文賞:Takemoto, T. & H. Suenaga: Four new species of the genus Ivalia Jacoby and a new species of Cangshanaltica Konstantinov, Chamorro, Prathapan, Ge et Yang(Coleoptera, Chrysomelidae, Galerucinae)from the Ryukyus, Southwestern Japan. Elytra, new series, Tokyo, 11(1) : 129-153.
2020年度功労賞:安藤清志 会員
2021年度功労賞:鈴木 亙 会員
2020年度奨励賞:渡部晃平 会員
2021年度奨励賞:末長晴輝 会員

 すべての一般講演が終了した後には 3つの分科会(甲虫幼虫・ゴミムシ・ハネカクシ)が平行開催された.なお,対面形式では事実上不可能な2つ以上の分科会を同時に参加された猛者がいらっしゃったようであり,これはオンライン大会の強みと言えそうだ.また,視聴者数をリアルタイムで把握できることや参加費を安価に設定できることもオンライン形式の長所であるが,とくに同定会にやや難があったのに加え,Zoomなどオンライン会議に慣れていない方の参加人数が少なくなっている可能性が感じられた.これらは今後のオンライン形式での学会大会を運営するうえでの課題として検討すべきであろう.

 本大会は3団体の合同大会かつオンライン形式での開催ということで,従来の大会とはそれなりに異なる点が多く,例年以上に多様性に富む大会になったと思う.コロナ禍の最中で情報交換や人的交流が限られる中,とくに若手会員諸氏にとっては貴重な発表の機会となったのではないだろうか.運営側の立場としては,不慣れな大会運営に加え,例年とは勝手が異なるオンライン形式による混乱で,申し込み登録や要旨集の配布などが全体的に遅れてしまった点についてはご容赦頂きたい.最後となるが,大会事務局を運営してくださった皆様,種々ご指示くださった大原会長,会場運営だけでなくオンラインシステムについても種々ご対応いただいた吉田貴大会員ら昆虫分類学若手懇談会の皆様,学会の執行部など関係者各位に厚く御礼申し上げる.

図1.国際化を見据えた英語での講演発表中の一コマ.山本ひとみ会員提供( 瑤寺裕会員から掲載許可を取得済み).
図2.授賞式の様子.山本ひとみ会員提供.
図3.授賞講演の様子.山本ひとみ会員提供( 辻尚道会員から掲載許可を取得済み).

 (大会事務局長 山本周平)

2020年度オンライン発表会(愛媛大学主宰)

講演要旨PDFはこちら

2019年度第10回大会(福岡市)

講演要旨集PDFはこちら

 日本甲虫学会第10回大会は,日本昆虫分類学会第22回大会,九州・沖縄昆虫研究会第3回大会,日本鱗翅学会九州支部2019年度大会との合同大会として,2019年11月30日(土)から12月1日(日)の日程で,九州大学伊都キャンパス(福岡市)を会場として開催された.福岡県では2015年の第6回大会以来の開催であった.大会参加者は187名であり,甲虫関係以外の研究者・同好者も多数参加し大盛況であった.
 1日目は,午前中に評議員会を,午後に公開シンポジウム「環境保全に果たす昆虫学の役割」を環境研究総合推進費(4-1901)との共催で実施した.現在の大量絶滅の時代にあって,かつての普通種が絶滅寸前という場合も生じており,昆虫研究に携わる者として今できることは一体何なのかを探るべく,以下の5名の方々にご講演いただいた.
荒谷邦雄(九州大学大学院比較社会文化研究院)昆虫研究に携わる者として,大量絶滅の時代とどう向き合うべきか? ~公開シンポジウム「環境保全と昆虫研究の関わり」開催の主旨~
苅部治紀(神奈川県立生命の星・地球博物館)やれば出来る? 絶滅危惧昆虫類の域内保全
北野 忠(東海大学教養学部)・小田島樹(東海大学大学院人間環境学研究科)・西原昇吾(中央大学理工学部)希少水生昆虫の生息域外保全
冨坂峰人(日本工営株式会社沖縄支店技術部)インフラ整備時の環境保全に係る最近の取組事例など
會田義明(環境省大臣官房環境影響評価課)環境アセスメント制度の概要と環境省の取り組み

 講演後の総合討論では,これまで甲虫学会が提出した要望書によって多くの希少種の保全が実現できたことが高く評価された一方で,希少種の保全,特に生息域外保全事業に対してもっと多くの予算をつけるように学会として関係省庁に要望すべきという意見も出された.また,中学・高校の理科の教員に対して,生物多様性科学や保全生物学の正しい知識を教授することも重要であるとの指摘もあった.
図.シンポジウムにおける講演.


 シンポジウムに続く総会の後,学会賞授与式・受賞講演が行われ,次の方々が表彰された.
論文賞Nishikawa, M.: Muganryus susumui gen. et sp. nov.(Coleoptera, Leopdidae, Catocerinae)from Hokkaido, a beetle subfamily new for the Japanese fauna. Elytra, NS, 8(2): 407-416.1
功労賞大平仁夫氏
奨励賞吉田貴大氏

 論文賞の西川正明氏が大会に来られなかったため,奨励賞の吉田貴大氏による受賞記念講演が行われた.



 懇親会は,伊都キャンパス内のビッグスカイで盛大に行われた.大会長の荒谷邦雄氏の挨拶と乾杯で開会し,中盤には次年度大会(昆虫分類学会と合同)開催地の愛媛大学の小西和彦氏から開催地の案内を頂戴した.会の終わりには会長の大原昌宏氏にスピーチを頂き,日本鱗翅学会九州支部長の二町一成氏に締めを行っていただいた.今回の懇親会では,九州大学に関連する焼酎や日本酒などを準備させていただいた他に,今回は伊都キャンパス内でも駆除が行われているイノシシ肉(糸島産)の料理2点を出させていただき,好評を得た.また,事前に会員の皆様からの差し入れをお願いしたところ,各地の焼酎やウイスキー,さつま揚げなどのご提供をいただき,多様なメニューを揃えることができた.休憩室のお菓子類を含め,ご協力をいただいた皆様に改めて感謝申し上げる.
 
 
 図.懇親会.


 2日目は,午前に同定会とポスター発表(10件)が行われた.同定会は会員諸氏のご協力により盛況であった.午後の一般講演は36題という想定を大きく上回る数となり,3会場に分けて開催させていただいた.そのうち,22題が甲虫類に関する発表であった.その後,4つの分科会(ゴミムシ,ゾウムシ,水生甲虫,カミキリ)が行われた.
図.同定会.
図.ポスター会場.


 本大会は4団体の合同大会ということで,普段の大会にはない多様な分類群の発表があり,新たな発見と交流が得られる有意義な大会となったと思う.会場の伊都キャンパスへの移動の不便さでご迷惑をお掛けした点についてはお許し願いたい.最後に,大会事務局を運営してくださった皆様,アルバイトとして手伝ってくれた九州大学の学生の皆様に厚くお礼申し上げる.
 (大会長 荒谷邦雄)   
 (大会事務局長 細谷忠嗣)
 

2018年度第9回大会(宇都宮)

講演要旨集PDFはこちら

 2018 年12 月1 日(土)2 日(日)の2 日間にわたり,日本甲虫学会第9 会大会が栃木県宇都宮市にあ る栃木県立博物館で開催された.栃木県での大会の開催は旧日本甲虫学会,日本鞘翅学会を通じてはじめ てと思われる.大会参加者は135 名で,昨年の静岡大会と同数であった.
 1 日目は公開シンポジウム「クビアカツヤカミキリの日本への侵入と現状」が開催された.はじめに日 本大学の岩田隆太郎氏に「クビアカツヤカミキリAromia bungii の現状:その分布・生態・防除法」と題し て,クビアカツヤカミキリがどんな外来種であるか詳しく説明していただいた.続いて,森林総合研究所 の加賀谷悦子氏に「クビアカツヤカミキリAromia bungii の侵入とその対策」と題して,日本への侵入とそ の経緯や国内での被害の拡大,現在取り組まれている対策や今後の課題について説明いただいた.最後に 筆者が「栃木県におけるクビアカツヤカミキリの現状」として,その分布拡大や被害状況,行政的な対応 や取り組みについて紹介した.外来種クビアカツヤカミキリは報道でもたびたび紹介されており,会員の みならず一般の参加者に向けての情報発信としてもその役割を果たすことができたのではなかろうか. シンポジウム後は総会が行われた.本年度の日本甲虫学会賞は十川晃一・吉富博之によるA revision of the genus Ancylopus (Coleoptera, Endomychidae) of Japan (Elytra new series 7(2)) が選ばれた.総会後には著者 の一人,十川氏による受賞講演が行われた.また,功労賞には平野幸彦氏,奨励賞には金尾太輔氏がそれ ぞれ選ばれた.
 懇親会はホテルニューイタヤで行われ,野村周平学会長の挨拶と新里達也氏の乾杯の発声で幕を開けた. 今回は特別に限定の地酒を準備した.栃木県は湧水が豊富な土地で,現在でも水生昆虫や水草など絶滅危 惧種の生物が多く生き残っている.その土地は酒米を含む多くの恵みを育み,うまい日本酒の生産にもつ ながっている.ファウナが健全であることは,人にとって豊かな恵みをもたらすのだろう.中盤に次年度 大会開催地「九州大学」の荒谷邦雄氏から開催地の案内を頂き,会の終わりには次期会長の大原昌宏氏に スピーチを頂き閉会となった.
 2 日目は午前に同定会とポスター発表(5 件)が行われた.同定会は会員諸氏にご協力いただき盛況であっ た.一般講演(16 題)は2 日間にわたり,分科会(水生甲虫+雑甲虫,ゴミムシ,カミキリ,ハネカクシ +ゾウムシ)は一部合同で6 つ行われた.大会を通し,会場の狭さや移動などの不便さ,1 日目の工事に よる騒音やそれに伴うスケジュールの遅延等,参加者の皆様にはご不便やご迷惑をおかけしたことを,お 詫び申し上げる.また,大会事務局として参加くださった方々はもちろん,当日,会場でご協力頂いた多 くの参加者の皆様のおかげで,有意義な大会となった.ここに厚くお礼申し上げる. (大会事務局長 栗原 隆)


2017年度第8回大会(静岡)

講演要旨集PDFはこちら(当日配布分のミスは修正してあります)

 2017年11月25日(土)から26日(日)の日程で,日本甲虫学会第8 回大会が静岡県静岡市で実施された.静岡県での大会の開催は旧日本甲虫学会,日本鞘翅学会を通じてはじめてのことである.今回は1 日目と 2日目で別会場での開催で行った.1 日目は静岡駅近くの貸会議室の一室を借りて行い,2日目は昨年開館したばかりのふじのくに地球環境史ミュージアムで行い,135 名の参加があった.
 1日目は公開講演会「海辺に生きる~海浜性・海岸性の甲虫たち~」と題して,5名の方にご登壇いただいた.大原昌宏氏による「環太平洋北部の海浜性甲虫類」は,日本,千島,北米西部等の海浜性甲虫調査の概要の紹介の他,生息環境との関係や海岸環境の保全についても深い示唆のある発表であった.続く「海辺に生きる植物 ~汎熱帯海流植物の進化史~」は会員外の植物学者,ふじのくに地球環境史ミュージ アムの高山浩司氏による講演で,世界に広く分布する海浜性植物に関する進化や分布拡大の歴史を, 分子 系統解析により明らかにされている研究の紹介は,会員諸氏にも聞きごたえがあったのではないだろうか. 上記2 題は基調講演的な位置づけで,少し長めの時間発表をしていただいた.その後,有本晃一氏による コメツキムシ,浅野真氏によるジョウカイモドキ,吉富博之氏によるチビドロムシを中心としたそれぞれ に充実した内容の発表をしていただいた.総会の後,本年度の日本甲虫学会賞を受賞された藤澤侑典氏に よる受賞講演は,受賞論文の内容だけではなく,広くアジアに生息するクモゾウムシの近縁群の解説を含 む興味深いもので,まだ数多くの未記載種がある上,未発見種もまだまだありそうで,今後の研究の進展 が楽しみなものであった.
 懇親会はホテルセンチュリー静岡に移動し,平井剛夫大会会長の乾杯で行われた.懇親会ではホテルに 地元食材を使った料理を特別にご用意いただき,静岡の地酒も厳選したものを準備した.そのことについ て,一部の方から絶賛していただいたことは嬉しかった.中盤に次年度大会開催地の「栃木県立博物館」 に縁がある吉富博之氏から開催地の案内を頂戴し,会の終わりには青木淳一先生にスピーチを頂き閉会と なった.
 2日目は場所をふじのくに地球環境史ミュージアムに移し開催された.午前に同定会とポスター発表(3 件)が行われた.同定会は会員諸氏にご協力いただき盛況であった.午後は2 会場に分かれ一般講演(14 題) と5 つの分科会(雑甲虫,ゴミムシ,ゾウムシ,カミキリ,ハネカクシ)が行われた.大会を通し,会場 の狭さや移動などの不便さや,講演要旨集の不備など参加者の皆様にはご不便やご迷惑をおかけしたこと を,お詫び申し上げる.しかしながら全体としてはご協力頂いた大会事務局委員の皆さんと参加者の皆様 のおかげで,有意義な大会となったと考えている.ここに厚くお礼申し上げる.
 
写真1 野村会長から賞状を受け取る藤澤氏.
 
写真2 懇親会の様子.
 
写真3 口頭発表会場Aの様子.
 
写真4 口頭発表会場Bの様子.
(大会事務局長 岸本年郎)


2016年度第7回大会(大阪)

講演要旨集PDFはこちら

日本甲虫学会第7 回大会は2016 年11 月26 日(土)から27 日(日)の日程で,大阪市立自然史博物館を会場として開催され,176 名の参加があった.開催にあたっては、大阪市立自然史博物館の皆様にご支援・ご協力をたまわった.

1 日目は評議員会,総会の後,シンポジウムと学会賞授与式が行われた.今大会のシンポジウムは「関西甲虫研究史」と題し,一般公開で開催された.現在の日本甲虫学会の礎の1 つとなった関西における研究者やアマチュアの努力,「町人文化」を源流とする活発な活動が寄与していることを振り返り,今後の若手育成を啓発することについて,以下の4 名に発表していただいた.

・澤田高平氏:基調講演「関西甲虫研究史-旧甲虫学会興隆期を語る」
・林靖彦氏:大阪甲虫同好会と芝田グループについて
・伊藤建夫氏:関西甲虫談話会(旧称大阪カミキリサロン)の歴史
・奥田好秀氏:関西チビゴミ研究会について

 
写真1.シンポジウムの様子.

また,学会の活動を一般の人にも広く認知していただくことや若手会員を獲得するために,この企画と連動して,大阪市立自然史博物館では企画展示「関西甲虫研究史」展が行われており,その図録も作成された.

続いて一般講演を5 題と学会賞授与式を行った.授与式では,次の方々が表彰され,福田侑記会員による論文賞受賞記念講演がおこなわれた.

・論文賞:福田侑記会員,山迫淳介会員,小川遼会員,酒井雅博会員
・功労賞:大林延夫会員,故高桑正敏会員
・奨励賞:土岐和多瑠会員

懇親会は長居で行われ,野村周平会長の挨拶と林靖彦大会会長の乾杯で盛大に行われた.参加者の方々は飲食や歓談,旧交を温めるなど,楽しんでくださったと思う.また用意していた食事が全て消費され,食事の廃棄の心配をしなくて済んだのは嬉しいことである.中盤に次年度大会事務局の岸本年郎会員より開催地の「ふじのくに地球環境史ミュージアム」などの説明案内があった.

2 日目は午前に同定会とポスター発表(9 件)が行われ,これも一般公開とした.同定会は会員諸氏にご協力いただき盛況であった.11 時から一般講演(4 題)が行われたが,同定会に残っている方もいらっしゃったため,会場が空いていたので一部の分類群はそのまま継続して行われた.午後は引き続き一般講演(8 題)と6 つの分科会(雑甲虫,ゴミムシ,ゾウムシ,カミキリ,ハネカクシ,水生甲虫)が行われた.
 
写真2.ポスター発表を聴く方々. 

分科会は昨年と同様に二部制とし,普段参加できない分科会に参加していただけるようにした.一般講演では音響のトラブルが少しあり時間がおしてしまったが,分科会世話人と参加者のご協力により無事に終えることが出来た.

2015年度第6回大会(北九州)

講演要旨集PDFはこちら

 日本甲虫学会第6 回大会は,日本昆虫分類学会第18 回大会との合同大会として,2015 年11 月21 日(土)から22 日(日)の日程で,北九州市立自然史・歴史博物館を会場として開催され,116 名の参加があった.開催にあたっては,以下の団体にご支援・ご協力いただいた.
 
 共催:北九州市立自然史・歴史博物館
 協賛:公益財団法人 西日本産業貿易コンベンション協会

 1 日目は,評議員会,総会の後,学会賞授与式が行われ,次の方々が表彰された.

論文賞:林成多会員・吉富博之会員
功労賞:林靖彦会員
奨励賞:山本周平会員


 授賞式に引き続き,林成多会員による論文賞受賞記念講演がおこなわれた.
今大会のシンポジウムは,荒谷邦雄氏をコーディネーター(兼パネラー)として,「生物多様性条約と昆虫研究:名古屋議定書・ABS 問題」と題して一般公開で開催された.今後,国際的な昆虫研究を行うに当たり避けて通れない生物多様性条約の詳細な解説と現場での実務について,以下の4 名のパネラーに発表していただいた.
「生物多様性条約と昆虫研究:名古屋議定書・ABS 問題」 
荒谷邦雄氏:生物多様性条約を理解する
森岡一氏:名古屋議定書・ABS 問題の理解のために
三田敏治氏:名古屋議定書への取り組み:大学と学会の現場から
斉藤明子氏:名古屋議定書への取り組み:博物館の現場から~大き過ぎる課題~

 懇親会は大谷会館に場所を移して開催した.野村周平会長の挨拶と森本桂名誉会員の乾杯に始まり,飲食・歓談を共にして親交を深めた.終盤には,次年度大会事務局の初宿成彦会員より,来年の大阪大会開催に向けて案内があった.
 2 日目は,開館直後から同定会とポスター発表(4 件)が開催された.同定会は大勢の会員諸氏にご協力をいただき,会場は人と標本で賑やかになった.その後,一般講演(11 題)と6 つの分科会(雑甲虫,ゴミムシ,ゾウムシ,カミキリ,ハネカクシ,水生甲虫)を行った.今回,分科会は3 つずつ,2 回に分けて行った.普段参加できない他の小集会にも参加できる反面,分科会と分科会の間の時間が10 分と短くなってしまったが,分科会世話人および参加者のご協力により,大きな時間のロスもなく無事終えることができた.
 共催・協賛団体の皆様には開催まで様々な形で事務局をサポートしていただいた.シンポジウム開催に当たりご尽力いただいた荒谷邦雄氏をはじめとして,多くの方々のご協力により本大会を開催することができた.そして,全国からご参加いただき,会を盛大に盛り上げてくださった会員の皆様に心よりお礼を申し上げる.
(大会事務局 蓑島悠介)

2014年度第5回大会(倉敷)

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 日本甲虫学会第5 回大会は,2014 年11 月22 日(土)から23 日(日・祝)の日程で,倉敷市立自然史博物館および倉敷市立美術館を会場として開催され,166 名の参加があった.地方の大会としては,盛大に執り行うことができた.開催にあたっては次の団体の協力を得た.

大会事務局 倉敷市立自然史博物館
共催 倉敷市教育委員会・倉敷市立自然史博物館
後援 倉敷市立自然史博物館友の会・倉敷昆虫同好会・岡山昆虫談話会
補助金 倉敷観光コンベンションビューロー


 1 日目は,評議員会,一般講演(2 題),総会の後,学会賞授与式が行われ,次の方々が表彰された.
論文賞 村上広将 会員
功労賞 森本桂 名誉会員・渡辺泰明 名誉会員
奨励賞 蓑島悠介 会員 
 授与式に引き続き,村上広将会員による論文賞受賞記念講演があった.
 論文タイトル:Revision of the genus Allochotes (Coleoptera, Cleridae) from Japan

 今大会の目玉イベントのシンポジウムは「甲虫類の知られざる生態― 甲虫生態学最前線―」と題して一般公開で開催された.コーディネーターの林成多氏の計らいで「あまり甲虫学会に登場されない方」にあえてパネラーをお願いしたそうだが,いずれの発表も衝撃的で大いに盛り上がった.4 名のパネラーの発表は次のとおり.
 シンポジウム「甲虫類の知られざる生態― 甲虫生態学最前線―」
川野敬介氏 わかっているようでわかっていない!?ゲンジボタルの配偶行動
杉浦真治氏 イモムシハンター・クロカタビロオサムシの得手不得手
岡田賢祐氏 闘う,飛ぶ,それとも物陰に潜む?ヨツボシケシキスイのオスの巧みな戦術
越山洋三氏  アカマダラハナムグリは鳥の巣で育つ

 
 一般講演

 夕方からは場所を倉敷ロイヤルアートホテルに移して懇親会を開催した.観光地ゆえ,当学会としては過去に例のない高級な会場となってしまい事務局としては参加者数を心配したが,107 名もの方にご参加いただきこちらも盛況であった.功労賞を受賞された森本桂先生の乾杯に始まり,飲食・歓談をともにして親交を深めた.ここで事務局の私から当学会初の講演要旨集のカラー表紙,しかも越山洋三氏による解説付きの彩色画「ヒラズゲンセイ× キムネクマバチ」についてご紹介させていただいたが,これが大変好評であった.終盤には,次年度大会事務局の蓑島悠介氏より来年は北九州市立自然史・歴史博物館での大会開催に向けて案内があった.
 
 懇親会


 2 日目は,開館直後から同定会(公開)とポスター発表(8 件)が同時進行で開催された.同定会の方は大勢の会員諸氏に講師協力をいただき,特に地元の研究者らにとってはめったにない機会とあって会場はたくさんの人と標本であふれかえった.その後も一般講演(16 題)と6 つの分科会(水生甲虫,雑甲虫,ゾウムシ,ゴミムシ,ハネカクシ,カミキリ)と丸2 日間ぎっしりの予定を無事終えることができた.
 
 同定会

 開催まで長期にわたりさまざまな形で事務局をサポートしてくださった大会係員の皆様をはじめ,全国からご参加いただき,会を盛り上げてくださった会員の皆様に心よりお礼申し上げる.(写真は小橋理絵子氏と末長晴輝氏の撮影)  (第5 回大会事務局 奥島雄一)

<出典>
奥島雄一 (2014)第5 回大会報告.さやばねN.S(16): 48-49.
[写真が他にいくつか掲載されています]

2013年度第4回大会(厚木)

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 第4 回日本甲虫学会大会は,2013 年11 月23 日(土)と24 日(日)の2 日間,東京農業大学厚木キャンパスにて開催された.日本昆虫学会関東支部第50 回大会との合同開催ということもあり,215 名の参加があり,おかげさまで盛況な会となった.
 大会初日は日本昆虫学会関東支部会員の一般講演(4 題)に続き,日本甲虫学会の総会が開かれた.その中で学会賞授与規程が正式に承認されるとともに,記念すべき第1回目の受賞者が発表された.総会に続き,授与式が行われ,論文賞を受賞された井村有希氏からは受賞講演があった.

・論文賞:井村有希・松永正光会員
・功労賞:上野俊一名誉会員
・奨励賞:山迫淳介会員

 引き続き一般講演(13 題,うち11 題が日本甲虫学会会員)が行われ,夕刻からの懇親会と続いた.懇親会はキャンパス内のレストラン「けやき」で,渡辺泰明先生の乾杯の発声により開始した.予想を大幅に上回る当日参加者があり,会場は関係者で埋め尽くされた.
 大会2 日目はポスター発表(8 題),同定会にはじまり,一般講演(9 題),公開シンポジウム,分科会(ゴミムシ,ハネカクシ,水生甲虫,雑甲虫,カミキリムシ,ゾウムシ)と盛りだくさんのプログラムとなった.
 シンポジウムでは開催地の神奈川県や東京農大と関連の深い地域である伊豆諸島をテーマとして取り上げた.高桑正敏氏による,伊豆諸島の地史や昆虫研究誌の概観に続き,比較的研究の進んでいる4分類群(ガ,カミキリムシ,クワガタムシ,アリ)について岸田泰則氏,藤田宏氏,荒谷邦雄氏,寺山守氏の順に話題提供があった.それぞれのパネラーからは膨大なデータが提示され,伊豆諸島の昆虫相のホットな現状が伝わったものと確信している.シンポジウム終了後には,今回,功労賞を受賞された上野俊一先生への授与式があり,先生から,これまでの研究生活を回顧するお話があった.
 2 日間を通じ,皆様のご理解とご協力もあり,大きなトラブルもなく無事,大会を終了することができたが,事務局責任者であった私の不備で,一部の参加者の名簿掲載漏れやゴミムシ分科会の要旨掲載漏れ等,大変なご心配とご迷惑をお掛けしたことをこの場を借りて深くお詫び申し上げる.
(大会事務局代表 小島弘昭)

 
 シンポジウムの様子.
 
 懇親会の様子.






2012年度第3回大会(豊橋)

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第3回日本甲虫学会大会は,愛知県豊橋市の豊橋市自然史博物館を会場に,2012 年12 月1 日(土)から2 日(日)にかけて開催された.東京と大阪の中間的な位置にあり東海道新幹線沿線という交通の便の良さもあって,136 名が参加した.台湾から2 名,韓国から1 名の参加者もあり,盛況な大会となった.

 学会初日は,松岡敬二 豊橋市自然史博物館長の歓迎あいさつ,大平仁夫 大会会長のあいさつに続いて,公開シンポジウム,特別講演,総会が開催された.公開シンポジウムは,「海浜性甲虫の多様性と進化」と題し,以下の5 つの講演の後,ディスカッションが行われた.

 公開シンポジウム「海浜性甲虫の多様性と進化」
S-0. 長谷川道明:公開シンポジウム「海浜性甲虫の多様性と進化」開催にあたって

S-1. 大原昌宏・小林憲生・稲荷尚記:日本産海浜性甲虫:エンマムシ類,イワハマムシ,ケシガムシ類について


S-2. Mi-Jeong Jeon・Kee-Jeong Ahn:Phylogeny of the marine littoral genus Cafius (Coleoptera: Staphylinidae)


S-3. 山本周平・丸山宗利:日本産海浜性ヒゲブトハネカクシ属,Emplenota 亜属およびTriochara 亜属(ハネカクシ科:ヒゲブトハネカクシ亜科)の分類学的研究から判明した種多様性


S-4. 沢田佳久:海と砂とヒョウタンゾウ


 続いて,上海のBi Wen-Shuan 氏による特別講演「チベット南東部採集紀行 Collecting trip in SoutheastTibet」が開催される予定であったが,講師のBi 氏が来日できなくなったため,同氏と交流の深い大林延夫副会長が代わって同氏のスライドを上演し,最近の中国の甲虫研究者の動向について紹介した.

    
シンポジウムの様子

 夕刻からは会場をホテルアークリッシュ豊橋に移し,故・佐藤正孝先生の奥様,佐藤寿美子さんの乾杯の音頭で,95 名が参加して好例の懇親会が行われた.

 大会2 日目は,口頭発表16 題,ポスター発表6 題,分科会(ゴミムシ分科会,水生甲虫分科会,ハネカクシ談話会,雑甲虫分科会,カミキリムシ分科会,ゾウムシ分科会)が行われた.各発表の内容については,学会ホームページにプログラム並びに講演要旨が掲載されているので,詳しくはそちらをご覧いただきたい.今大会の特徴としては,若手研究者の台頭と水生甲虫類の躍進が目立ったという印象を受けた.

 なお,ゴミムシ分科会会場について,十分な会場が用意できなかったことを誌面を借りてお詫び申し上げたい.

 今大会では,初めての試みとして,学会員の協力のもと,特別展示「2011 ~ 2012 年に発見された新種の甲虫」を開催し,33 種について,ホロタイプ1 点,パラタイプ48 点を展示した.博物館の一般スペースに公開展示したため,博物館を訪れた多くの来館者が興味深そうに見入っていた.中でも微小なキュウシュウカラヒメドロムシの標本を備え付けの虫めがねで必死に探していた子どもの姿が印象的であった.

 展示した標本ならびに協力者は,以下のとおりである.

    
 特別展示の様子
アカイシミズギワゴミムシ,ショウゾウクロナガゴミムシ,カトウオオズナガゴミムシ,シラホネオオズナガゴミムシ,ケンザンミナママルガタゴミムシ紀伊半島亜種,ニセモンキマメゲンゴロウ,イツクシマコバネナガハネカクシ,クレコバネナガハネカクシ,タイシャクコバネナガハネカクシ,Lathrobium miaoershanum, L. kishimotoi, L. hunanense, コマツダケハナムグリハネカクシ,ミヤマハナムグリハネカクシ,Hesperosoma vietnamense, マメカメノコデオキノコ,キュウシュウカラヒメドロムシ,クボクロチビジョウカイ,アマミクリイロコメツキ,オオツヤケシコメツキ,ヤクシマチビクチキムシ,サトウクチキムシ,ヤエヤマクロオオクチキムシ,コチビコブツノゴミムシダマシ,ミクラコブツノゴミムシダマシ,チビコブツノゴミムシダマシ奄美亜種,イシガキチビコブツノゴミムシダマシ,Cryphaeus lanae,Taiwanotrachyscelis chengi, ノヤシケシカミキリ,Schwarzerium hasuoi, Amamichytus setiger, A. nubilus, A. juni,A. yulongi, シコクトホシハムシ.
 (出品協力)秋田勝己,有本久之,愛媛大学ミュージアム,韓 晶道,長谷川道明,伊藤建夫,森田誠司,益本仁雄,新里達也,岡田亮平,高橋和弘,戸田尚希,渡辺泰明(ABC 順,敬称略).

2011年度第2回大会(札幌)と北海道採集会の記録

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 第2 回日本甲虫学会大会は,北海道大学高等教育推進機構S 棟にて,2011 年7月30 日(土)から31 日(日)にかけて開催された.北海道という遠隔地であり,3.11 の東日本大震災の影響,アイドル嵐の大型コンサートと日程が重なり宿泊施設の確保が難しい状況となり,参加人数74 人のやや少なめな学会となった.初めての試みとして,日本鱗翅学会(第58 回大会)と共同で開催し,会場1 階を鱗翅学会,2 階を甲虫学会で使用,シンポジウム,懇親会を共催で行った.鱗翅学会と合わせると,209 名参加の大型大会となった.

シンポジウムは「北方圏の成り立ちと,その昆虫相」(座長:大原昌宏)のタイトルで,五十嵐八枝子「北方圏における最終氷期以降の植生変遷史」,高橋英樹「北方圏の植物分類地理」,初宿成彦「最終氷期の北海道の甲虫相」,朝日純一「サハリンの蝶相? 解明の進展と再検討(予報)?」,中臣謙太郎「北方の樹林帯とシャチホコガ」(敬称略)の5 名の講師の講演が行われた.

一般講演は,口頭発表13 件,ポスター発表5 件が行われ,活発な研究発表と質疑応答がなされた.通例の同定会は参加者全員楽しそうな驚きと興味津々の顔つきでお互いの標本箱を覗き合う一時.専門家の講師の先生方,ご協力有難うございました.

分科会は,7件:北方のゴミムシの小シンポジウム(世話人:伊藤 昇),ハネカクシ談話会例会(野村周平),ハムシ分科会(松村洋子,末長晴輝),カミキリムシ分科会(長谷川道明),ゾウムシ分科会(的場 績),水生甲虫小集会(蓑島悠介),雑甲虫分科会(生川展行)が開催された.

初日夕方の懇親会は,両学会で167 名の参加があり,お互いの分野の垣根を越えた甲虫屋と蝶屋・蛾屋という異分野交流が盛んに行われた.遠くからの参加者には,有志からの土産が配られ(図1),いつにない雰囲気の盛り上がりの楽しい会となった.

採集会は,大会終了後の8 月1 日~ 2 日、層雲峡温泉のペンション「山の上」において一泊で行われ,10 名の参加があった.初日夕方に一同現地集合し,食事(図4)の後に有志でゲンゴロウモドキを探しに行くが幼虫ばかりで成虫は1 ペアのみ,帰り道に立ち寄った雨中中の街灯でなぜかホソコバネカミキリが見つかる.翌日は,大雪湖~十勝三股周辺で甲虫探し.各自思い思いの甲虫を採っていたようで,カラフトヨツスジハナカミキリ,ポプラハムシ,ムラサキハムシ,ルリマルクビゴミムシなどが採れていた.大雪湖の近くに太いドロノキが積まれた土場があり(図5),エゾアオタマムシを探したが残念ながら見つからなかった.

最後に,大会事務局の不手際により,大会内容が参加予定者のみの通知で,事前に会員全員に連絡がなされなかったことについて,慎んでお詫び申し上げる.

 大会会長:久万田敏夫,大会実行委員長:堀 繁久,大会事務局:大原昌宏,古川恒太,蓑島悠介.

<出典>
  堀繁久・大原昌宏 2011.第2 回日本甲虫学会大会・採集会 報告.さやばね (3): 39-40.


2010年度 第1回大会(大阪)

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  旧甲虫学会と旧鞘翅学会の合併が成立して初めての大会が、2010年11月13日・14日の2日間にわたって、大阪市立自然史博物館で開催された。研究発表は口頭が22題、ポスターが6題と盛りだくさんで、最新の成果や興味深い知見が多く紹介された。

 1日目午後には、上野俊一、森本桂、渡辺泰明の各先生方による特別座談会が催された。日本の甲虫研究をとりまく歴史について、明治以前から戦後、さらに未来にわたって、貴重な写真や文献、書簡などの資料も交え、たいへん興味深い内容であった。座談会の記録記事は、新しい和文誌で紹介される予定なので、大会に参加できなかった方も掲載を楽しみにしていただきたい。

 1日目夕刻には懇親会が自然史博物館内ナウマンホールで開かれ、多数の参加者が互いに親睦を深めた。塚本珪一・大会長、新里達也・学会長による鏡割りや、大阪自然史博物館友の会有志による屋台などもあり、会場は賑やかな雰囲気に包まれていた。

 2日目午前の同定会は、会場の実習室が参加者たちであふれ返り、身動きがとりにくいほどの熱気であった。会場係としては、もう少し広い部屋を準備し、同定依頼者が各講師の先生方へアプローチしやすいレイアウトにすればよかったと後悔した。また、2日目午後には7つの分科会(ゴミムシ、ハムシ、ゾウムシ、ハネカクシ、カミキリ、水生甲虫、雑甲虫)が開かれ、それぞれの分野の研究発表などが活発に行われた様子であった。

 なお、大会参加者数は北海道から九州にわたる170名であった。1日目午後の総会において、新役員体制や2011年度予算が承認され、新シリーズの会誌発行など新しい形態での学会活動が始まることとなった。旧甲虫学会の前身である近畿甲虫同好会が1945年に発足した大阪の地で、新学会の発展に向けて船出となる大会が開催できたことは、たいへん意義あることだったと感じている

<出典>
初宿成彦 2010.(新) 日本甲虫学会・第1回大会の報告. 甲虫ニュース(172): 38. 日本鞘翅学会.
初宿成彦 2010.(新)日本甲虫学会・第1回大会の 報告. ねじればね (128): 19-20.


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