日本甲虫学会 調査観察会
調査観察会報告
2024年 宮崎県綾(予定) 2023年 宮崎県綾 2022年 京都府丹後半島 2021年 新型コロナのため中止 2020年 新型コロナのため中止 2019年 岐阜県日和田高原 2018年 富士山周辺地域 2017年 福島県南相馬市 2016年 新潟県佐渡島 2015年 沖縄本島国頭 2014年 徳島県剣山 2013年 岐阜県日和田高原 2012年 新潟県佐渡 2011年 岐阜県日和田高原 |
2023年度報告 宮崎県綾
2023年度(第11回)調査観察例会は,5月12-13日に宮崎県綾町ユネスコパークで開催されました.九州方面からの参加者が多く,参加人数は29名でした.
綾ユネスコエコパークは,2012年7月に国内5箇所目として登録されました.1980年に登録された志賀高原BR(Biosphere Reserve),白山BR,大台ヶ原・大峰山・大杉谷BR,屋久島・口永良部島BRは文部科学省が指定したもので,自治体から申請をしたのは綾が国内初です.ユネスコ文化局が指定する自然遺産は保全がメインです.しかし,Biosphere Reserveは,ユネスコの自然科学セクターで実施される「人間と生物圏(MAB:Man and the Biosphere)計画」における一事業として実施されており,生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会の共生)を目的としています.綾町は約2,500haもの照葉樹林が残り,自然生態系農業を50年もの長きにわたって継続し,家庭から出る生ごみは堆肥化するなど,自然に与える負荷を小さくするという町民の取組が評価され,BRの指定につながっています.
日本でも有数の照葉樹の原生林が残っている自然環境において,本州ではめっきり減少している甲虫がまだここには棲息しているというサプライズを体験しました.
屋久島と共通する南方系の甲虫が得られるという特徴もあるようで,他の場所では採るのに苦労する甲虫がさほど苦労なしに採集できるのが魅力と感じました.
綾町ユネスコパークで苦労したのが,ヒルの多さでした.大森岳林道が特に多く,ゴム長靴で防除し,定期的に靴の外側に付着したヒルを何匹も駆除しましたが,両足あわせて10匹以上にたかられるに至り,ついに中に侵入され1か所吸われてしました.生まれて初めての経験でした.
今回特筆すべきは宿の料理の豪華さであり,二晩の夕食で,旅館で養殖しているアユをはじめ,ウナギ,コイ,チョウザメ(宮崎大の技術)をエンジョイしました.四大川魚料理を食する経験は今までにない感動の経験でした.
ユネスコエコパークとして,地元の生物の調査をしておきたいという地元の方々の思いにこたえるのが,今回の目的の一つですが,わざわざ調査に来てくれた全国の虫屋に対する,感謝の気持ちが豪勢な夕食につながったと勝手に解釈しました.
綾町ユネスコパークの自然環境は,どこも素晴らしい環境のため,どこから手をつけてよいのかのポイントが見つけにくく,上級者向きの採集地です.今回は現地幹事の笹岡康則氏により,適切なポイントを案内していただきました.中でも笹岡氏にセットしていただいた,ライト採集では,コブスジコガネ等のコガネムシ,モリヒラタ・アトキリ・ミズギワ等のゴミムシの仲間,水生甲虫を中心に様々な甲虫が飛来し,充実した収穫でした.
かなりきつい登山になる,茶臼岳林道奥から,式部岳への登山に挑戦した参加者はジョウカイをはじめとするブナ帯の甲虫でかなりの成果があったようです.
綾町ユネスコパークは懐の深い採集地で,今回の調査はほんのさわりであったと考えています.
1.虫が沢山いる.
2.虫屋が集まって,がやがやと夜遅くまで話ができる.
3.宿の方のご好意で幹事の負担が楽になる.
4.食事が極めて豪勢である.
5.時間的には東京から遠くない.
という,5 つの条件が揃った採集地は日本中探しても,そうは見つからないでしょう.2024度も 7 月 6 ~ 7 日に綾町ユネスコパークの観察会を開催する予定であります.
今回現地幹事として,きめ細かい配慮・準備をいただいた,木野田毅氏,笹岡康則氏の両名に深く感謝を 申し上げる次第です.
2022年度 調査観察例会報告
日本甲虫学会の2022年度調査観察例会は,6月25日(土)から26日(日)に京都府京丹後市のスイス村(太 鼓山スキー場)において行われました.
ナイター設備を設定していただいた地元の一瀬政人さんを含めて,20名の参加がありました.
2020年,2021年度は,コロナ騒動のために中止になりましたので,2019年の日和田高原以来,3年ぶり の開催でした.現地幹事の黒田さんと初宿さんが,企画.立案され,実行委員会を作成して進められてきま したが,初宿さんが事前に体調を崩されたため,小生が当日の現地幹事を代行しました.
今回驚いたのは,クリ,クマノミズキ,ゴトウヅル,イワカガミ,ショウマなど多様な花が咲いていたに もかかわらず,甲虫はおろかほかの昆虫もほとんど見られなかったことです.花に虫がほとんど訪れない現 象は今年,他の場所でも観測されています.昆虫の訪花性の減少はここ数十年での長期的傾向ですが,主因 が花側の変化なのか,個体数の減少もしくは訪花意欲の減退などの昆虫側にあるのか,興味深いテーマです.
一瀬政人さんに設定していただいたナイターには多くの甲虫の仲間が集まり,ゴミムシダマシ,ゾウムシ など多様な甲虫の飛来を確認しました.関東ではめったにお目にかからないアオスジカミキリがいくつか飛 来しました.内山のブナ林や大フケ湿原では,アオヒゲナガクチブトゾウムシ,カラカネヒメキマワリ,キ スジツツハムシなど関東ではほとんど採集できない種類を確認できたのは収穫でした.前2種は神奈川県未 記録種であり,キスジツツハムシも,神奈川では,箱根仙石原で記録されているのみの湿地性の希少種です.
今回,虫は好きだけれど,採集に関しては全くの初心者の参加がありました.ビギナーの彼のために,時 間を割いてフォロー.アドバイスした,参加者の方々の面倒見の良さと温かい心遣いに,今までにない調査 観察会の新しい側面を見ることができました.(大木 裕)
2019年調査観察会(第8回) 報告
1.開催日程:2019 年7 月13 日(土)~ 14 日(日)
2.開催場所:岐阜和田高原周辺地域(日和田高原ロッジ・キャンプ場)
3.参加者数:14 名
4.開催状況につきましては,大木裕幹事補佐に,さらに一般からの初参加された西脇ファミリーと津田さん,松野さんには,会に参加した感想をお願いしました.
キャンプ場の広大な敷地の中には,湿地,池,渓流,広葉樹林など多彩な環境が存在し,敷地内だけでも十分に調査・観察を楽しめました.参加会員9 名のうち5 名がハネカクシに興味を持つ方々であったため,ハネカクシの話題が盛り上がり,雨の中でも成果が得られたようです.ナイター装備を設置つけましたが,雨天のため甲虫の飛来はわずかでした.また,コテージを借り切ったので,夜遅くまで虫談議を楽しめたのは調査観察会ならではといえます.敷地内の湿地では,スゲハムシとスジクロボタルが確認されました.カミキリムシでは,開田高原方面で得られているヤツボシシロカミキリが敷地内で確認されました.千間樽高原の柳蘭峠の林道には,ショウマ,ゴトウヅルの花が豊富で,多くのPidonia 類やジョウカイボン類がよく飛来していました.さらに,針葉樹の貯木場のそばで日中にゲンジボタルが見つかっています.その他の甲虫類では,マエクロチビオオキノコムシ,オオアカチビヒラタムシ等の一般的に少ないと考えられる山地性の種類の確認ができ,さらにナガゴミムシ類,チビシデムシ類,ヒゲブトハネカクシ類がトラップで得られました.そして今回の何よりのトピックスは,本学会のHP を見て一般からの参加がありました.彼らの姿を通して昆虫採集を始めた頃のことを思い出しました.(文:大木 裕)
今夏の日本甲虫学会の調査観察会に息子(中3)の虫友達(中1,高1)と家族で参加させて頂きました.
息子は幼稚園の頃より昆虫に目覚めましたが,夫婦共無知のため,各地の自然観察会等に参加し楽しんでおりました.ただ中学生にもなると欲しい情報も特殊になり,本やインターネットで調べても疑問は尽きないようでしたので,自力での昆虫採集の限界を感じておりました.そのような時にこの会を知り,素人が場違いでご迷惑かと思いましたが,快いお返事を頂き参加することができました.現地では,人生の大先輩方が肉眼で見えないような昆虫についても熱く,温かく,幸せそうに語っていらっしゃるのを見て,昆虫の奥深さを改めて思い知らされました.子ども達にとっても,技術,知識を教わったのはもちろんのこと,昆虫愛を貫き通した生き様を肌で感じられた事が,今後の人生の指標ともなったことでしょう.短い時間でしたが大変貴重な経験となりました.ありがとうございました.
(文:西脇克俊・西脇理恵・西脇玲央・津田正太郎・松野拓海)
2018年調査観察会(第7回) 報告
1. 開催日程:2018年7月7日(土)~8日(日)
2. 開催場所:山梨県富士河口湖町精進湖民宿村(樹海荘)
3. 参加者数:10名
4. 開催状況:以下,大木裕さん(幹事補佐)に執筆をお願いしました.
七夕の夕べに全国から集まって一堂に会する企画でしたが,あいにく平成30年西日本大水害の発生 と重なり,参加申し込み者13名のうち残念ながら関西方面の3名が河川氾濫のため参加出来ず,最終 的な参加者は10名となりました.
7日は雨の中での調査となりました.ビィーティングによる調査の結果,カミキリムシなどでかなり の成果が得られ,富士山周辺での記録が少ない種類の確認が出来たと考えています.一方,鳴沢林道 は倒木のため通行止めになり,参加者は民宿村付近での調査がメインとなりました.夕食=懇親会の 後は,夜遅くまで虫談に花が咲き,語り明かしました.一緒に語り明かした方とは不思議な心の糸が おのずとできてくるのが,この例会の最大の魅力と感じております.翌8日の朝食後に記念撮影後に 散会となりました.
●2017年調査観察会報告(第6回)報告
1. 開催日程:2017年6月17(土)~18(日)
2. 開催場所:福島県南相馬市
3. 参加者数:18名
4. 調査結果:福島昆虫ファウナ調査グループ発行の会誌「Insec TOHOKU」の第43号(2018年1月発行)に報告される予定
5. 開催状況:各自それぞれの虫を狙って,飯館村野手上山,南相馬市助常林道、二本松市日山遊歩道等を訪問しました.今回のトピックスは,雑甲虫、カミキリムシ,ハムシ,ゴミムシダマシ・糞虫,ガムシ・ゲンゴロウ等の大御所が幸運にも勢ぞろいし,さながら甲虫オールスター戦のような豪華メンバーが一同に会したことです.虫のファミリーを超えた懇親に加えて,東北の虫屋さんと他の地域の虫屋さんが地域を超えた交流の縁を結ぶ一夜であり,甲虫史上に残るイベントであったといっても過言ではないでしょう.企画・セティングの一切をお願いした現地幹事の福島昆虫ファウナ調査グループによるきめ細かいご配慮に深く感謝申し上げる次第であります. また、Facebookサイト:2mmクラブに成果の写真が公表され,ネット上で活発な意見が飛び交っています.宿泊した民宿“いちばんぼし”では,朝市で仕入れた地元野菜のさまざまな料理を楽しむことができ,野菜というのはこんなにおいしいものかという再認識をしました.また,すべてが木材で作れた広い風呂と木材インテリアの客室により,木造建築の贅沢さを味わうことができました.飯館村は今年になってから立ち入り禁止が解除された地域ですが,訪れてみて以下のような印象を持ちました.日本人として一度は訪れるべき場所と思いました.1) 家はあれども人はいない.いるのは他から来た工事の人ばかりで,道を尋ねても誰も答えられない.2) ビニールシートで覆われた除染土壌が積まれていて,古墳群のような景観 .3) パトカーの警官もマスクしている .4) スポット的な線量オーバーのため,道が途中で,前ぶれもなく突然通行止めになっている場所がある,カーナビがなければ当然迷子になる.5) テレビで毎日,放射線量の予報が出る. 乞食石林道の帰りに,横川ダムのトンネル近くでパンクしてしまいました.線量が高く誰も近づきたがらない場所なので,どうなるかと心細くなりましたが,それを承知で救援に来てくれたロードサービス“クルマのわかつき”の担当者や,速やかにタイヤの交換をしてくれたイエローハットの方々(震災の時も閉店せずに地元のために頑張ったことで有名な店舗)から,福島県民の心やさしさを学ぶことができました.虫以外にも多くのことを調査観察できまして,収穫の多い調査観察例会でした.(文責:大木裕 横浜市青葉区)
●2016年度調査観察会(第5回)報告
1.開催日程:2016年6月4日(土)~5日(日)
2.開催場所:新潟県佐渡島
3.参加者:4名(岐阜県/埼玉県/千葉県/神奈川県)
4.開催状況:
・佐渡島での開催は2013年に続いて2回目である.開催時期や地元参加がなかったこ
・調査成果としては,いくつかのグループにおいて佐渡島 未記録種を確認できたようで
●2015年度 採集例会報告
沖縄本島国頭村「やんばる学びの森」において6 月6,7 日に開催されました.21 名と多くの方々の参加があり,情報交換に加えて,いろいろな話題をとおして親睦が深められた会となりました.現地幹事の木村正明氏をはじめ沖縄在住の皆様にはご協力いただきましたこと,改めてお礼申し上げます.調査観察会では,次年度以降も参加されます皆様に開催地の自然を楽しんでいただけて,親睦を深められるような会になることを心がけております.またより多くの皆様がご参加下さいますよう,心よりお待ちしております.<調査観察会担当幹事:日下部良康>
<出典>
日下部良康 (2015).2015 年度採集例会報告.さやばね N.S. (20): 57.
<おわび>やんばる調査観察会における問題とその対応に関するお知らせとお願い
●2014 年度 採集例会報告
2014 年度( 第5 回) 日本甲虫学会採集例会は7 月26 日から27 日にかけて,四国剣山系の夫婦池湖畔のラフォーレつるぎ山にて開催された.現地幹事の吉田正隆氏のご尽力により,調査・観察会として入山許可を所得した.なかなかの盛況であり,参加者は26 名であった.
ノリウツギの花は咲きかけであったが,好天候に恵まれて,四国でしか採れないもしくは四国以外では採集が難しい甲虫を採集できた参加者が多かったと思われる.
鹿に食害された広葉樹の幹に次々に飛来したクロホソコバネカミキリやホストの状態に恵まれたトライクビチョッキリが参加者により多数採集された以外にも,Pidonia の仲間ではマホロバヒメハナカミキリ,チュウジョウヒメハナカミキリ,コメツキではシコクダンダラコメツキ,雑甲虫ではヨコミゾコブゴミムシダマシ等が採集されている.個人の採集品としてはヒメモンシデムシを初採集できたほか,大型で美麗なアカハネブチヒゲハネカクシ,関東では採れないオガタナガタマムシに加えて,新種として記載される段取り中の国内未記録属のコメツキダマシEucnemis sp,および剣山で3 頭目と思われるシコクオオアオハムシダマシ(死体)をスィーピングで採集できて,かなりの成果であった.
静かな湖畔の宿で食事を楽しんだ後,星月夜の下で深夜の2 時頃まで会話を楽しむ人達やなぜか蛾を採集する人もいて忘れられない“ 剣の夜” であった.鞘翅学会時代から, 20 年近く採集例会の幹事を担当させていただいたが,来年度からは新しい幹事にバトンタッチし,調査観察会として新しい趣向が試みられるものと考える.(大木裕 横浜市青葉区)
<出典>
大木裕 (2014).2014 年度採集例会報告.さやばね N.S. (16): 50-51.[本編では集合写真、寄せ書きなども掲載しています]
●2013年度採集例会報告
2013年度日本甲虫学会採集例会は7月20日から21日にかけて岐阜県日和田高原キャンプ場において行われた.
当日、他の学会の行事等と日程が重なり,また参加予定者に急遽トラブルが発生したりして,参加者は10名であった.
16名用のコテージを借り切って独占し,他の客に気を使うことなくエンドレスで懇親を深めることができたのは,貸切コテージでしか味わえない魅力であり,参加者全員と十分な話ができる人員規模であった.
今年は7月後半に咲く花の開花時期が異常に早まっており,咲き始めのノリウツギ
長峰峠の長野県側にある九蔵峠には状態のよいノリウツギがあって,多数のハナカミキリが飛来していた.フタコブルリハナが多く飛来し,ジャコウホソハナ、コウヤホソハナなどが採集されている.
チャオ御岳スキー場の咲き残りのトリアシショウマにはミヤマヒメハナカミキリ等のヒメハナカミキリ類,千間樽沢のミヤママタタビからはニセハムシハナカミキリが得られた.またロッジ敷地内のビーティングではヒトオビチビカミキリが得られている.
その他の甲虫としては,ゾウムシ類が豊富でシギゾウムシsp.,タコゾウムシsp.,クチカクシゾウムシsp.等の図鑑に載っていないと思える種を自己初採集できた.ヒゲナガヒラタムシやオオセダカコクヌストも採集できたが,一昨年採集したアラメホソヒラタムシやオオヒラタコクヌストは採集できなかった.
夕食後にコテージの敷地内で,内藤準哉氏のナイターセットを組み立てて,恒例のナイター採集が行われた.低気温,月明かりというナイターにとっての悪条件であったがヒロオビモンシデムシを生れてはじめて採集できた.
(横浜市青葉区:大木 裕)
●2012年度採集例会報告(佐渡)
宿舎のある七浦海岸。 | 海浜性甲虫採集を楽しめた羽茂素浜海岸。 |
2012年度日本鞘翅学会採集例会は6月9日から10日にかけて,佐渡市の七浦海岸において,越佐昆虫同好会との合同開催で行われた.参加者は越佐昆虫同好会も合わせて18名であった.民宿で驚かされたのは夕食の豪勢さであり,驚くべき品数に加えて,海の幸の新鮮さは,採集例会ではもう二度と味わえないであろう海の幸であった.
今回は残念ながら二日とも雨が降るというと悪条件であったが,平野部では晴れていても,山地では雨が降っている島嶼ならではの天候であった.そういう条件でも気合いを入れて花,側溝,スプレーイング,叩き網等を行ない,カミキリムシではなんとかPodonia 4種,サドミヤマチビコブカミキリ,サドコブヤハズカミキリを確保できた.Pidonia属に関してはチャイロヒメハナ,セスジヒメハナ,ヤマヒメハナが一応独立種になっており,労せずして未採集種を3種も採集することができた.他の採集地ではカミキリムシに関して野外で新規採集種を1種でも増やすのが大変な昨今,佐渡ならでは御利益だとおもった.
立ち枯れ,生木のスプレーイングはかなり面白く,クチナガチビキカワムシやオオニジゴミムシダマシが得られた.
白雲台から中興へ下りる防衛施設道路も前日まではからからの状態であったが,雨で好条件となりナガゴミムシ等のゴミムシが採集できた.気のせいか本州産とは前胸の形等が少し違って見える種がいくつかある.今後の同定で地域として貴重な記録が見つかった場合はさやばね等に投稿したいと考えている。
午前中に900mの山地での採集をして,午後には海浜性の甲虫を採集するということができるのは佐渡だけの醍醐味であろう。
今回のトピックスとして,新井久保氏による採集例会最高年齢参加記録の更新を報告したい,2年前の日和田高原の第一回採集例会86歳で参加された新井氏が,今回88歳になられて参加され、自己の最高年齢参加記録を更新された.この記録は今後しばらくは新井さん本人以外の人には更新できないものと考える.
(横浜市青葉区 大木 裕)
●2011年度採集例会報告(日和田高原)
2011 年7 月2 日から3 日にかけて,梅雨前線が南北に移動する天候の中,岐阜県日和田高原において甲虫学会第2 回 採集例会が開催された.同地での採集例会は少しずつ季節を変えての3
年連続開催であり,関東,中部,関西から14 名の方々が参集した.参加者は多くなかったが,コテージを借り切ってオールナイトで語り明かせる環境のもと,参加者全員と親睦を深めることができた.カミキリムシの採集品ではミヤママタタビの花からニセハムシハナカミキリ,立枯れ木からアラメハナカミキリなどが採集され,トピックスとしては,谷角素彦氏により岐阜県としては初記録かもしれないモモブトハナカミキリ1♂
が得られた.その他の甲虫では,一昨年に続いて千間樽沢の針葉樹の立ち枯れからオオヒラタコクヌストが得られ,ロッジの敷地内でルリクワガタが得られている.ミヤマヒメハナをはじめとするPidonia類も豊富であった.コメツキについては種類が豊富な場所であり,普通種のクロツヤハダコメツキと思ったものが同定してもらうとキイロツヤハダコメツキやコクロツヤハダコメツキであると判明したり,ヘリアカシモフリコメツキやナオミヒメコメツキなどが採集されたりしている.ルリクワガタについては,晩秋から冬季に材中から新成虫を掘り出した経験はあったが,今回ミズナラ生木の枯死部に集まっている成虫を観察し,生態の一面を垣間見ることができた.天候が心配されての開催であったが,幸いにも採集に支障があるほどの崩れはなく,皆さん思い思いに採集と懇親会を楽しまれたのちに,ナイター幕の前で採集をしたり,室内で情報交換をしたりしながら,日和田高原の夜のひと時を過ごされたようだ.3
日の朝食後に記念写真の撮影をおこない,名残惜しい思いの中,再会を誓っての散会となった.
とても楽しい懇親に加え,甲虫ではないが,ヨコジマナガ,ジョウザンナガ,ヒメヨコジマナガなどのハナアブ類が見られる素晴らしい自然環境と風を感じさせていただき大満足の筆者であった.参加者の皆様お世話になりました.とても楽しかったです.またお会いしましょう.ありがとうございました.
<出典>
日下部良康 2011.採集例会報告 -甲虫学会 2011 年度採集例会に参加して.さやばね(3): 41.
ページのトップへ
大会・例会ページへ